温度依存の可変ゲルダンパー

加熱して振動をキャンセルする『サンドダラー式ゲルダンパー』

ソフトマシンの技術概要
砂浜にはサンドダラーと呼ばれるコイン状の生物が存在しています。サンドダラーはヒトデに近い生態で、砂との接地面に細かい繊毛をもっており、上手く繊毛を動かすことで採餌行動を取ることができます。この技術はこのサンドダラーに触発されて新しい移動機構を形状記憶ゲルと振動を組み合わせて実現できないか、という問いから生まれました。なるべくシンプルな構造で移動させるために、我々が思いついたのは温度依存で柔らかさが変わる形状記憶ゲルです。このゲルを可変ダンパーとして振動をキャンセルする主要な部品として組み込みつつ、移動部は温度が低いときは砂地でも移動できるようにサンドダラーに倣って接地面積を増やせる繊毛構造をフレキシブルレジンの3Dプリンティングで造り出しました。この技術は42度という温度境界で、柔剛切替ができ、低温では駆動、高温では静止といったように材料的なトリガーを実現します。


ソフトマシン『サンドダラー式ゲルダンパー』の特徴

形状記憶ゲルのダンパー
形状記憶ゲルは組成にステアリルアクリレート(通称、SA)を含んでいます。SAは常温時(ここでは42℃以下)では結晶化しており形状記憶ゲルは固くなるが、加熱すると結晶化した部分が融解することで柔らかくなる。(柔らかい状態のときに変形させて冷却することでその変形を維持でき、再び加熱するとSAの結晶化が始まり、ラメラ構造が回復してゲルは造形時の形に復元する)この形状記憶ゲルの性質は、加熱・冷却による可変ダンパーとして捉えることができます。

繊毛構造の3Dプリンティング
振動の伝達、そして砂地のような不整地の移動という要素に目を向けると、繊毛構造は接地面積を増やすことができるため振動を伝達するのに適しています。実際のサンドダラーもこの繊毛をうまく使いこなすことで、移動から採餌までこなしています。この技術では、この繊毛構造を柔らかい材料の3Dプリンティングで造形できるのかという部分に挑戦し、成功している事例です。

振動・ゲルダンパー・繊毛構造の一体化
この技術は振動モータで移動を生み出し、ゲルダンパーで伝達可否を決定し、繊毛構造で不整地移動を実現しています。複数作成して、一斉に駆動させると温度の高い場所で集合して停止させることができますので、逆に冷やせば駆動させやすくなるので、日照条件による環境適応性をうまく応用することで様々な工業部品として使用することができるかもしれません。


BOM

作業時間

2日程度

材料
形状記憶ゲル(要:SA)
フレキシブルレジン(LCD方式3Dプリンティングによる繊毛造形)
ポリ乳酸樹脂(振動モータの土台)

装置
Phrozen Shuffle (LCD方式3Dプリンター)
FDM方式3Dプリンター

部品
振動モータ
ボタン電池


期待できる「やわらか」サービス

やわらか建材
温度依存で運搬しやすく、固定しやすいダンパー素材に。

やわらかロボット部品
ジョイント周りのダンバーとして、あるいはジョイントそのものとして応用可。

やわらか植木鉢
植物を日照条件の良いところまで自動で運搬する機構として。

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