ゲルを活用した汚れ除去技術

生成と除去を繰り返すゲルのターンオーバーシステム「ゲルヘアー」

ソフトマシンの技術概要
モノに付着する外界の汚れを防ぐには、水であれば撥水性の良い表面コーティングが採用され、ホコリであれば粘着テープなどで除去することができる。多様な汚れに対して、統一的に除去できるシステムは作れないだろうか?、この疑問に挑み、発案したのが繊維状ゲルの吐出生成装置「ゲルヘアー」である。基本的なコンセプトは、生物の毛である。生物の被毛は外界からの粉塵、水汚れ、油汚れから皮膚を保護する役割を担っており、2週間程度の周期で抜け落ち、生え変わるターンオーバーというメカニズムをもつ。ゲルはその組成を種類を変えることで、親水性にも、新油性にもなり、タック性の発現も実現できる。汚れ除去に適合するゲル溶液を自由に変更でき、繊維状のゲルを吐出と排出を繰り返すシステムが本技術である。この技術は、ゲルが乾燥や裂傷に弱く、ロボット部品として応用が中々に困難であることから着想した、ゲルを恒常的な機械部品として捉えず、元よりゲルは一度きりの役割を終えると同時にターンオーバーし、また新しいゲルとして復活することで機能する動的な部品として捉え、絶え間なく訪れる『汚れ』から保護する役割に応用する術を形にしたものです。

この技術は特願2021-165993『汚れ除去方法及び汚れ除去装置』として、出願された技術です。


ソフトマシン『ゲルヘアー』の特徴

性質の異なる3つのゲル
汚れの種類は大きく分けると、水溶性汚れ、新油性汚れ、物理的な汚れ(埃など)になります。水溶性汚れに足して効果的に振る舞うは水を吸うゲル、親油性汚れは油を吸うゲル、物理的な汚れはベタつきの強く、表面の電荷で埃を吸い寄せる電解質ゲルが役立つかもしれない。この事例は、中性のDMAAm(N,N-ジメチルアクリルアミド)ゲル、電解質のNaAMPS(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩)-DMAAm共重合ゲル、新油性のOctadecylゲルを『ゲルヘアー』として吐出している。結果として、親水性か、親油性かの選択が汚れ除去に効いており、少ない汚れであれば完全に除去することが可能です。しかし、電解質ゲルは埃汚れに特別有効になるということはないようです。また油汚れは、Octadecylゲルが候補の中では最も除去性能が高く、紙で拭き取るよりも綺麗に除去でき、アルコールで拭くよりも性能は良くないという実施例があります。

蠕動ポンプと局所的なUV照射
ゲル溶液は蠕動ポンプでシリコーンチューブに送り出されていきます。チューブを流れていくゲル溶液は、基盤の開口部の直前に365nmの波長を持つUV光を照射します。照射部以外はアルミホイルでシリコーンチューブを保護することで、狙った部分だけで重合反応を引き起こすことが可能となります。しかし、蠕動ポンプだけでは詰まりを起こすことがあり、シリンジでチューブ内に圧縮空気を送り込んでゲルことで、詰まりの解消を促すことができます。ゲルの種類を入れ替えるときはUV照射を停止し、ゲル溶液を切り替え、ごく短い間(1秒間など)だけUVを照射せずにポンプを回します。この作業で、古いゲルヘアーと新しいゲルヘアーを分断することできます。古いゲルヘアーはピンセットなどで取り除くことができ、乾燥させれば縮小します。


BOM

作業時間

10分程度

材料
DMAAmゲル
NaAMPS-DMAAm共重合ゲル
Octadecylゲル

基盤
シリコーン(EcoflexTM00-30)※中央に吐出口

装置
蠕動ポンプ
シリコーンチューブ(内径2mm、外径4mm)
Arduino
365nmUVライト(ハンディタイプ)


期待できる「やわらか」サービス

やわらかクリーナー
屋外と相性が良く、エアコンのドレンホースの先や、浴室、屋根、壁などの汚れ除去装置として期待できる。

やわらか環境センサー
海の水質を向上させる不純物除去装置への展開。

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