やわらかアニマロイドシリーズ vol. 1

犬ライクな柔らかさで見守る「ゲルコマ」

ソフトマシンの技術概要
日本の観光地では至る所に鎮座している2匹でひとつの狛犬。狛犬のポーズが違うものはよく見かけるけど、柔らかい狛犬というものを想像できる人はいるでしょうか? やわらかアニマロイドシリーズ vol.1「ゲルコマ」は柔らかい材料と3Dプリンターを駆使して誕生した、実際の犬のような柔らかさをもつ狛犬です。この技術は触ることを前提として考えられた材料同士の組み合わせ方、そして生き物らしさを演出する仕組み、配置するだけでも何かしらの情報を与えてくれる、そんなペットとしても、見守りロボットとしても機能しうる存在を生み出す技術です。
このモデルはゲルコマ(大):W110mm H330mm D220mm とゲルコマ(小):W40mm H100mm D90mm の2種類があり、ソフトマシン開発コアメンバーと株式会社スタジオミダス様との協力で開発されました。ソフトマター由来の新しいコミュニケーション媒体として社会実装されることをミッションとして掲げています。
ソフトマシン『ゲルコマ』の特徴


性質の違う2層のソフトマター
ゲルコマは積極的に人に触られて、その柔らかさを体験してもらうことで新しい癒しを提供することを目的として作られています。その場合、クリアしなければならない大きな課題は、超柔らかい材料であること、ベタつきによる不快感を与えないことです。一般的に柔らかい材料になればなるほどタック性(ベタつき)が発現して、ほとんどの生物の肉のような柔らかさをもつ材料はベタつくという認識になります。この技術はタック性と柔らかさが異なる2つのソフトマター材料を3Dプリンターで作製した壊し型を使って成形します。触れる面は薄いシリコーン膜を作り、膜の内側は超軟質のウレタン層で満たすことで、ベタつかず、そして全体はすごく柔らかいという触感を実現しています。
涙を流す演出ができ、リアルな外観をもつ眼球
ゲルコマは内側に3Dプリンターで光造形された内殻をもっています。 その内殻にはシリコーンチューブが通っており,外部から眼球の目頭周辺に向けて流路が設計されています。そして、眼球はリアルの外観を生むため、プリントされた虹彩を強膜と角膜を模したシリコーンに挟みます。眼球を嵌め込んだ時、外部から供給される流体が、流路を経由して涙のように流れるかを詳細に検討し、流涙表現を実現しています。
紫外線で色が変わる
材料にはブラックライトのような特定の波長をもつ光を照射したときに青白く発光する材料を混入させます。そうすることで、触って柔らかいという狛犬に、置いておくだけで周囲環境の紫外線の強さを知らせるバロメータとしても利用できます。
BOM
作業時間
1週間程度:ゲルコマ(小)
1ヶ月程度:ゲルコマ(大)
試薬(形状記憶ゲル調製用)
全身
シリコーン樹脂(EcoflexTM00-30)
ウレタン樹脂(人肌ゲル)
液体蛍光着色剤(IgniteTM)
眼球
シリコーン樹脂(PDMS)
液体蛍光着色剤(IgniteTM)
装置
3D Systems ProJet 460 (CJP 3Dプリンター)
ACCULAS® BA-85S(SLA 3Dプリンター)
部品
シリコンチューブ(外径4mm、内径2mm)
期待できる「やわらか」サービス
やわらかペットロボット
ペットとの思い出を姿形として記録するやわらかアニマロイド。
やわらかメンタルケア
柔らかい質感で、生活空間に馴染むぬいぐるみ的な癒しを提供。
やわらか見守り
環境適応(温度や音など)により演出が変わる材料で、情報を伝える見守りデバイス。
やわらかアニマロイドシリーズとは?
やわらかアニマロイドシリーズは柔らかい材料や構造を最大限活用して、「何か知的に動きそうな柔らかいモノ」を体現するプロトタイプです。何か動くものというとロボットや機械を想像しがちですが、このシリーズは先入観からくるロボット開発は一旦考えず、とにかくソフト材料や構造、時には機械学習などの技術も「やわらかく」集約させる研究を「やわらかアニマロイド」と呼んでいます。
