やわらかアニマロイドシリーズ 0(ゼロ)

ソフトマターロボットのプロトタイプ「ゲルハチロイド」

ゲルハチロイドの技術概要
ゲルハチロイドは山形大学が開発したソフトマターロボティクスのプロトタイプ『ゲルハチ公(※)』を発展させたものです。柔らかい材料、特にゲルのような一般的にはロボットの部品として使用されない材料を主役にした、ソフトマター由来のコミュニケーションロボットのプロトタイプとして開発されました。柔らかい身体、38℃程度の体温、異方弾性体の二球、形状記憶する関節など3Dプリンター×ソフト材料のテクノロジーが埋め込まれています。ここで紹介する技術は、圧倒的な写実性をもつゲル眼球アクチュエータです。ゲルハチロイドの目は本当のゲルでできています。眼球ゲルは異なる種類のゲルがレイヤー構造を成して一体化されており、4本の駆動用のゲルアクチュエータと接続されています。電気的な配線を一切必要とせず、水と塩、熱だけで動き、外観が変わる機能をもっています。露出する眼球をあえてゲルを用いて演出する挑戦的な技術となっています。

このモデルの寸法はW250mm H550mm D600mmで、原寸大のハチ公像の60%の縮小版です。ソフトマターコンソーシアム、ソフトマシン開発コアメンバーと株式会社スタジオミダス様との協力で開発されました。ソフトマター由来の新しいコミュニケーション媒体として社会実装されることをミッションとして掲げています。

『やわらかロボ!ゲルハチ公』
 人が触りたくなる「新しいコミュニケーションの創出」をテーマとし、渋谷のメインシンボル忠犬ハチ公像をモデルに『山形大学ソフトマターロボティクスコンソーシアム』の開発メンバーが形にしたやわらかいハチ公ロボット。2019-2020年の『超福祉展他』、2022年の『きみとロボット展』など、各種展示会、メディア等で取り上げられ、注目を浴びた。


ソフトマシン『ゲルハチロイド』の特徴

4層のハイドロゲル
ゲル眼球は、生物の角膜(透明な層)と強膜(不透明な白濁層)、そして虹彩を全て再現しています。角膜と強膜は同じICNゲル(相互架橋網目構造ゲル)をシリコーンモールドで成形することで造られ、色彩の違いは溶媒のポリエチレングリコール溶液(PEG溶液)の有無によって生み出しています。PEG溶液を含むICNゲルは重合により白濁し、含まないICNゲルは限りなく透明になります。このゲル間に挿入したのは表面にUVプリンターで虹彩を印刷した透明なICNゲルシートです。最後に漫画的な演出として熱により虹彩のサイズが拡大縮小する機能を実装しました。これは熱により体積相転移を起こし、白濁しながら縮小するNIPAゲルを虹彩ゲルの上に挿入することで実現しています。この4層のから構成されるゲル眼球の外観は非常に写実的で、柔らかく、生物の眼のような湿った質感を模倣します。

4本の電解質ゲルアクチュエータ
ゲル眼球には4本のNaAMPS-DMAAm共重合ゲルによる膨潤速度が速い円柱型ゲルが接着しています。眼球は半球体で、底面にプレゲル溶液を塗布し、その上にアクチュエータを固定する治具を取り付け、UV光硬化させることで、接着されます。ゲル眼球アクチュエータは電解質な性質を持っており、水では膨潤して大きくなり、塩では水を排出し縮みます。そのため、5回程度は収縮と膨潤を繰り返すことで、眼球運動を模倣することができます。繰り返し過ぎると、ゲルは平衡状態となり、運動の幅が小さくなります。


BOM

作業時間

2週間程度:ゲル眼球とアクチュエータを一体化させるまで

材料
Ecoflex TM 00-30(シリコーンモールド)
NaAMPS(アクチュエータ用)
DMAAm(眼球・アクチュエータ用)
PEG溶液(眼球用)

装置
Phrozen Shuffle (LCD方式3Dプリンター、治具用)
UVプリンター(Mimaki製UJF-3042HG)

部品
シリコンチューブ(外径4mm、内径2mm、流涙用)


期待できる「やわらか」サービス

やわらかペットロボット
ペットとの思い出を姿形として記録するやわらかアニマロイド。

やわらかメンタルケア
柔らかい質感で、生活空間に馴染むぬいぐるみ的な癒しを提供。

やわらか見守り
環境適応(温度や音など)により演出が変わる材料で、情報を伝える見守りデバイス。


やわらかアニマロイドシリーズとは?

やわらかアニマロイドシリーズは柔らかい材料や構造を最大限活用して、「何か知的に動きそうな柔らかいモノ」を体現するプロトタイプです。何か動くものというとロボットや機械を想像しがちですが、このシリーズは先入観からくるロボット開発は一旦考えず、とにかくソフト材料や構造、時には機械学習などの技術も「やわらかく」集約させる研究を「やわらかアニマロイド」と呼んでいます。

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